Hinotori
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フライフィッシング用語辞典

Fly Fishing Dictionary


Quill
Quill Gordon
  本書に載せる推薦文を書いてくれるよう、著者の古い友人である桐生の島崎憲司郎さんにお願いしていたところ、送られてきました。著者のプライベートの曝露を含めて、心温まる推薦文となりました。著者としてはやや気恥ずかしい部分もあるのですが、どうせ本に載るので、プレビューとして皆様に紹介いたします。あの、シマケン独特の語り口をお楽しみください。  
     
   

フライフィッシングをめぐる森羅万象の道しるべ

島 崎 憲 司 郎
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     この辞典は、フライフィッシング界の名物ドクター、川野信之さんが人並み外れた忍耐力と執念でビッシリ詰め込んだコトバのフライボックスです。 ドクターといってもこの先生の場合、いささか規格外でして、脳神経外科が御専門(脳腫瘍病理の世界的権威)にもかかわらず、酒煙草コーヒー(ガブ飲み)はおろかパチンコ屋の階段から転げ落ちて御入院(!)などという武勇伝なども数々お持ちというユニークなお医者様…先ごろ御開業のクリニックの他に北里大学医学部の客員教授もこなすあの川野センセイが、御多忙の合間にコツコツと書きためた原稿が積もりに積もってこういうズシリとした書物に結実したわけで、まさしく継続は力なりの良き見本、人間の執念というのはつくづく恐ろしいものですね。御本もこうして立派に整い、今後はドクター・カワノがくわえ煙草でパチンコを弾く 雄姿を相模原界隈で見かける機会も幾分か多くなることでしょう。お疲れ様でした川野 さん。しばらくは、どうぞご存分にパチンコ玉とお戯れください。
   フライフィッシングに関わる用語をこれだけ集めた本は今のところ他にはなく、これから 先も、よほど物好きで採算度外視の編集者が現れない限り、類書が企図されることは当 分ないでしょう。この種の本格的な辞典を編める人は他にも何人かいるはずですが、賢明 な彼らまたは彼女らが貴重な釣りの時間をガタ減りさせ続けること必定の骨折り仕事を二 つ返事で受けるかどうかは定かではありません。受けたとしてもおいそれとは完成しない のではないでしょうか。仮にこの僕のアタマがもっとマシに出来ていて、この手の辞書の 一つぐらい書ける知恵や了見をよしんば持っていたとして、それを形にせよという超弩級 に酔狂な御仁が万一現れたとしても、迷わず御断りしたいものです。人生の時間は限られ ていますからね。それに僕の場合、困ったもんですが釣りの他にも色々道楽が多いし。 という脳天気な当方などとは大違いの川野さんの勤勉さと持続する意思、いったん手を 付けたら脇目も振らず最後までやり遂げる集中力、…ひょっとするとこれは、彼が脳外科 のベテラン執刀医であることと無関係ではないような気がしてきました。開頭手術の途中 でメスを放り出してしまったのではどうしょうもないですからねェ…、パチンコ屋に行きたい気持ちも分かりますよ。
   そのパチンコの楽しみもお預けにして夜な夜な執筆を続けた川野さんのお蔭で、我々は この充実した用語辞典を手にすることができたわけです。長年この釣りをやってこられた 人の中には、こんな辞典の項目程度は全てそらんじているわいと豪語なさる方もおられる でしょうが、いつの間にかこんなに多くの事柄を頭に入れていた御自身に内心ギョッとす るかも知れません。自分が歩いて来たのは、こんなにもディープな世界だったのかと。 ずいぶん昔の話ですが、とある川辺で「こんな渋い日には、例えばこういう小さなニン フをこうやって流すと妙に効いたりするんですよね」か何か言いながら、自分用に巻いた 駄作を何本かフライボックスからつまみ取って川野さんに差し上げたことがありました。 ショートシャンクフックの20番だったか22番だったかのそのちっぽけなフライをなぜか川 野さんは後生大事に持っていらして、このたびの御著書にそれらを撮影した写真を使いたいとの仰せ。ああいう不細工な代物を世間に晒されるのは営業上大問題( 笑) なので「何が何でもやめてもらいたい」と申し上げたのですが、「何が何でも載せたい」とのこと。この本の難点をしいて言えばこの点なのですが、これも紺屋の白袴、料理人が作るまかない料理みたいなものとしてどうか御笑覧のほど。
    今やデジタル全盛時代とやらで、諸分野の名だたる辞典が次々にコンパクトに電子化されている御時世ですが、スピード第一お手軽大好きの風潮がどこかに置き忘れてきた大切 なものが何かありはしないでしょうか。確かに便利な世の中にはなりましたが、便利さと引 換えに失ってしまった大事なことも少なくありません。せめて趣味の分野ぐらい昔なが らの アナログの良さも残しておきたいものです。この辞典を手にしてパラパラめくって見る…そ れはさながら色とりどりの様々なフライが隙間無く収められた何十箱ものフライボ ックスを 次々に開けて眺める妙味にも似ています。アナログの形で作られたこの用語辞典はまた、 インターネットでフライフィッシングについて検索するキーワードの宝庫でもあります。どの ページからでも読める読み物としても面白く、読み方次第では思いがけないことがヒントに なって釣果につながる工夫やフライタイイングのアイデアが閃いたりもすることでしょう。この 釣りの長い歴史、偉大な先達、国内外のあれやこれやのフライパターン、釣り場で出くわす 例の毒蛇、はたまた吸血ヒルやツツガムシなどの危険な生物、それらにやられた際の対処 方や著者ならではの医学的解説、その他色々と役に立つこのユニークな辞典は、まさにフ ライフィッシングをめぐる森羅万象の道しるべです。
 
 
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